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特別講演
「水泳指導者のための美術入門」
茨城県陶芸美術館
副主任学芸員 外舘 和子氏 |
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生命感は芸術の重要なテーマ
私は学芸員になってから水泳を始めましたが、水泳に対して憧れのようなものを抱いています。それはなぜかと言いますと、水泳を長く続けてきた方が肉体的に美しいから、そして泳いでいる時の動きが美しいからです。水泳は泳ぐことそれ自体が目的であり、呼吸すること、手足を動かすことを基本とするという意味で、人間が生きていくということに直結するスポーツだと思います。
さて、ロダンという彫刻家をご存じだと思います。彼は近代彫刻の父と言われており、日本の彫刻家に多大な影響を与えました。なぜロダンが近代彫刻の父なのかというと、彼は彫刻で生命感を表現したからなのです。彼の作品にはわざとらしいくらいの筋肉がつけられています。またポーズもアクロバティックで不自然です。これらの誇張やデフォルメは、人間が持っている生命感を表現するためのものなのです。そして日本ではこの生命感が芸術の重要なテーマとなっていきました。
動勢で表現する生命感
日本の彫刻はそれまで外形模写的でした。再現することを写実といい、リアリティーがあるとしていたのです。外形模写的な彫刻は表面上は似ているかもしれませんが、その人が生き生きとそこに存在しているようには見えませんでした。日本ではロダンを知って初めて、再現ではないところにリアリティーを感じたのです。そして人間の持っているエネルギー、生命感をなんとかして出そうとするようになりました。芸術の重要な目的は、生きるとは何か、命の意味は何か、それを考え表現することです。生命感を表現するには人間像だけにこだわることはありません。人間像でなくても、あたかも今にも動き出しそうな、動勢のある表現はたくさんあります。皆様もそうした作品の前で「これは生き生きとした躍動感のあるフォルムだ」と感じ取っていただきたいと思います。
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